幼児教育無償化の制度と会計処理について①

    

1.背景

従来から行われてきた総合的な少子化対策を推進する一環として、この2019年10月1日からいわゆる「幼児教育無償化」が実施されます。

子ども・子育て支援法が改正され、第2条第2項で以下の下線部分が追加されています。

「子ども・子育て支援給付その他の子ども・子育て支援の内容及び水準は、全ての子どもが健やかに成長するように支援するものであって、良質かつ適切なものであり、かつ、子どもの保護者の経済的負担の軽減について適切に配慮されたものでなければならない。」

以下、学校法人にかかわる部分を中心に「幼児教育無償化」の概要をみていきます。なお、これに伴い「幼稚園就園奨励費補助事業」は2019年9月で廃止されています。

 

2.「子ども・子育て支援新制度」での大きな区分

この経済的負担の軽減の方法は、従来の「子ども・子育て支援新制度」(以下「新制度」という。)の支給認定の対象施設であるか否かによって二つに区分されることになります。

 

子ども・子育て支援新制度の概要

「新制度」は、幼児期の学校教育や保育、地域の子育て支援の量の拡充や質の向上を進めるために2015年4月から開始された制度です。幼稚園については、この制度の枠組みに移行した場合、補助金も都道府県からの私学助成ではなく「施設型給付費」として市町村から支給されます。また、私学助成では、保護者が園ごとに定められた一律の保育料を支払ったあと、市町村からの就園奨励費により所得に応じた支援が行われる仕組みでしたが、「新制度」では、保育料(の基本部分)自体が、市町村ごとに定める所得に応じた負担額となっています。なお、「新制度」においても、教育・保育の質の向上の対価として「入園受入準備費」「施設整備費」などの使途で、「特定保育料」を保護者から徴収することは可能です。

また、この「新制度」の施設(幼稚園を含む)の利用を希望する場合には、利用者は市町村から利用のための認定(1号~3号)を受ける必要があります。

(1)「教育・保育給付」の対象施設

今回の無償化において、「新制度」の対象施設として、改正前の現行法に基づく個人給付の対象(改正後は「子どものための教育・保育給付」。以下「教育・保育給付」という。)となっている認定こども園、幼稚園、保育所等については、子ども・子育て支援法施行令(平成26年政令第213号)を改正し、利用者負担を無償化する措置を講じる、とされています。

つまり、上図の縦4列の一番左端の列のグループです。認定こども園には図のように4類型がありますが、②幼稚園型は、幼稚園が「認定こども園」の認定を受けたものです。これらの施設型給付費の対象施設では、その利用料(保育料)のうち基本部分は保護者の所得に応じて決定されていました。今回の無償化はこの基本部分の利用料(保育料)の徴収がなくなることになります。

具体的には年齢別に下記のように区分されます。

ア 3~5歳:幼稚園、保育所、認定こども園、地域型保育の利用料を無償化。対象期間は小学校就学前の3年間ですが、幼稚園については、満3歳から入園可能である学校教育法の規定等に鑑み、満3歳から無償化となります。

 

イ 0~2歳:上記の施設を利用する住民税非課税世帯が無償化対象です。

 

(2)「教育・保育給付」の対象外施設

上記の「教育・保育給付」の対象外施設については、「子育てのための施設等利用給付」(以下「施設等利用給付」という。)の制度を創設し、市町村は、 「施設等利用給付」の対象施設等(特定子ども・子育て支援施設等)について、支給要件を満たした子どもが利用した際に要する費用を支給することとなっています。

具体的には、上図の左から二つ目の列であり、「教育・保育給付」の対象外である幼稚園(「新制度」への未移行園)、特別支援学校の幼稚部、認可外保育施設、預かり保育事業、一時預かり事業、病児保育事業、子育て援助活動支援事業であって、市町村の確認を受けたものが対象とされています。

「新制度」への未移行園の場合、その利用料(保育料)は園が独自に決定しますから、今回の無償化でも、利用料(保育料)を全額無償とするのではなく、月額2.57万円を上限として無償化することになります。大臣所轄法人の設置する幼稚園はこの未移行園であることが多いと考えられます。

また、企業主導型保育については、「特定子ども・子育て支援施設等」には該当しないため、「施設等利用給付」の対象にはなりませんが、子ども・子育て拠出金(事業主拠出金)によって標準的な利用料が無償化対象となります。

 

(1)(2)うち主なものを図解すると下図のようになります。

対象施設/対象年齢 3~5歳
(小学校就学前3年間)
0~2歳
移行園、認定こども園、保育所、地域型保育 利用料を無償化 幼稚園については満3歳から無償化 住民税非課税世帯を対象として無償化
未移行園(幼稚園) 月額上限2.57万円まで無償化保育料と入園料が対象
企業主導型保育 標準的な利用料を無償化 住民税非課税世帯を対象として標準的な利用料を無償化
認可外保育施設 保育の必要性の認定を受けた場合、認可保育所における保育料の全国平均額(月額3.7万円)までの利用料を無償化 保育の必要性があると認定された住民税非課税世帯の子供たちを対象として、月額4.2万円までの利用料を無償化

 

なお、 各種学校(インターナショナルスクールなど)については、幼児教育を含む個別の教育に関する基準はなく、多種多様な教育を行っており、また、児童福祉法上、認可外保育施設にも該当しないため、無償化の対象外とされています。また、上図以外の幼児教育を目的とする施設については、乳幼児が保育されている実態がある場合、認可外保育施設の届出があれば、保育の必要性のある子供については無償化の対象となりえます。

また、この無償化の対象となる利用料の範囲ですが、保護者から実費で徴収している費用(通園送迎費、食材料費、行事費など)は、無償化の対象外となっています。食材料費については、保護者が負担する考え方を維持し3~5歳は施設による実費徴収を基本、低所得者世帯等の副食費の免除を継続し、免除対象者を拡充(年収360万円未満相当世帯)しています。

 

3.幼稚園の預かり保育

幼稚園に在籍している園児が保育の必要性の認定を受けた場合、幼稚園の利用料に加え、預かり保育の利用実態に応じて、月額1.13万円までの範囲で無償化されます。保育の必要性の認定については、従来の「教育・保育給付」の1号~3号認定とは別に、「施設等利用給付」の認定区分が以下のように新設されています。

認定区分(支給要件) 保育必要量(内容) 支給に係る施設・事業 無償化との関係
新1号認定子ども 満3歳以上の小学校就学前子どもであって、新2号認定子ども・新3号認定子ども以外 のもの 認定が不要 幼稚園、
特別支援学校等
利用料(保育料)を無償化
新2号認定子ども 満3歳に達する日以後最初の3月31日を経過した小学校就学前子どもであって、第19条第1項第2号の内閣府令で定める事由により家庭において必要な保育を受けることが困難であるもの 認定こども園、幼稚園、特別支援学校 (満3歳入園児は新3号、年少児から は新2号) 認可外保育施設、預かり保育事業、 一時預かり事業、病児保育事業、ファ ミリー・サポート・センター事業(2歳児 まで新3号、3歳児からは新2号) 利用料(保育料)に加え「預かり保育料」等も無償化
新3号認定子ども 満3歳に達する日以後最初の3月31日までの間にある小学校就学前子どもであって、 第19条第1項第2号の内閣府令で定める事由により家庭において必要な保育を受け ることが困難であるもののうち、保護者及び同一世帯員が市町村民税世帯非課税者 であるもの

(続く)

 

 

 

 

    
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