講師等の旅費についての源泉徴収

    

学校法人の方が悩む源泉所得税の処理の一つが講演会の講師等に支払う旅費の取り扱いです。これについて、先日、とても興味深い記事が週刊税務通信に掲載されました。「調査で指摘事例の多い交通費等の源泉徴収について取材 フリーランス等への交通費等は“立替払い”でも源泉不要 国税庁 直接支払うケースと同視できれば問題なし」(令和2年7月27日 No.3615)です。

まず、この問題の背景をみてみましょう。

講師に支払う旅費あるいは交通費は報酬の一部として、原則として源泉徴収が必要となります(所得税法204条1項、所得税法基本通達204-2)。ただし、学校法人「から交通機関、ホテル、旅館等に直接支払われ、かつ、その金額がその費用として通常必要であると認められる範囲内のものであるときは、当該金銭等については、204-2及び204-3にかかわらず、源泉徴収をしなくて差し支えない。」(所得税法基本通達204-4)とされています。

つまり、源泉徴収をしなくてもよいのは、学校法人から交通機関等に「直接支払われ」るケースに限定されています。

ただ、現実的に多いのは講師の方が直接新幹線等の切符を購入し、精算を依頼してくるケースではないでしょうか。この場合、①原則どおり講演料に合わせて切符代も源泉徴収の対象にしている学校法人もあるでしょうし、②源泉は講演料のみとし切符代は職員の立替交通費と同様に処理している学校法人もあると思います。あるいは、③講師にJRの窓口等で学校法人宛の領収書を受領してもらい、それと引き換えに切符代は源泉徴収しないで支払う、という学校法人もあるでしょう。

通達等では明確になっていないため、私も、学校法人の方から質問されると「原則的には~」としか答えようがないというのが本音でした。

ところが、冒頭の記事によると、交通機関やホテル等から「学校法人宛ての領収書」を精算するケース(前述の③)においては、形式的には直接支払いとはいえないものの、「学校法人宛ての領収書」に基づく処理であるため、実態としては直接支払いと同視できることから、源泉不要とのことだ。ただし、「講演者宛ての領収書」を学校法人が受け取って精算する場合は、直接支払いと同視はできないとしているので注意が必要です。

    
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